高岡商の石黒選手と吉田監督
二年ぶりの開催となった夏の全国高校野球選手権大会は連日、球児たちの熱戦が続く。コロナ禍の甲子園は選手、監督にとってどんな場所だったのか。二〇一九年に続いて出場した高岡商の石黒和弥選手(三年)と吉田真監督(38)に“聖地”の印象を聞いた。 (長森謙介)
一歩足を踏み入れただけで違和感に気付いた。「二年前とは別の場所」。石黒選手はそう感じたという。入場を許されたのは学校関係者のみ。一般の観客がいない聖地は二年前に見た景色とは一変していた。
最後の通常開催は二年前の夏。満員の甲子園でプレーした経験を持ち、今大会にも出場した球児は全国で八人しかいない。その一人が石黒選手だ。当時、一年生ながら遊撃の定位置を確保し、三試合で計五安打を放った。「球場の全方向から声が聞こえた。ヒットを打てば大歓声が響いて、自然と気分も高揚した」
だが、今大会は十一日の松商学園(長野)戦で遊撃の守備につくと、印象は一変した。「外野席に誰もいなくて。声もいつも以上によく聞こえた」。最大四万七千人を収容できる球場にぽつりと取り残された感覚。声援自粛もあって定位置から投手へかけた声が球場内に大きく響いた。
今大会を含め計六度、甲子園で指揮をとった吉田監督も、静かすぎる甲子園に違和感を抱いた。「過去より重い雰囲気を感じた。普段なら選手が背中を押してもらう一般のお客さんからの歓声がないことに加え、コロナ対策で学校関係者の声援がなかったことが要因だと思う」と話した。
静寂に包まれた甲子園で選手たちは全力で戦ったが、勝利には届かなかった。だが指揮官も選手も言い訳はしない。吉田監督は「環境は相手も同じ。松商学園さんの力が上だった」と述べ、「コロナ禍で大会を開催してもらって本当にありがたかった」と感謝した。
聖地の異なる両面を経験した石黒選手は「最後の夏に同級生と行けたことは一生の宝物」と笑顔を見せ、こう続けた。「やっぱり甲子園は特別な場所です」
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