■１１月３０日 「あの人は今」ではないが、謹慎中の元大関朝乃山がふと気にかかった。３場所出場停止から復帰し、九州場所で再入幕の阿炎が優勝争いに加わる大活躍をみせたからだ。同様に朝乃山も日本相撲協会のガイドラインに違反し６場所出場停止中で、西前頭１０枚目まで落ちた九州場所はその３場所目だった。
一人横綱の照ノ富士が全勝優勝し大関以下との実力差を見せつけた場所でもあった。かつての栃若（栃錦、初代若乃花）柏鵬（柏戸、大鵬）輪湖（輪島、北の湖）のように強い横綱にはライバルがいてこそ強さもより引き立つ。残念ながら今の照ノ富士にはライバルは見当たらない。
千秋楽の相手貴景勝はじっくり見られ攻めあぐねて完敗。正代に至っては〝割崩し〟で取組さえなかった。大関に一番近い御嶽海もムラがありすぎる。そんなとき「朝乃山がいたら」と想像したファンも多かったろう。右の相四つで対戦成績は照ノ富士の５勝０敗だが、毎回力のこもった熱戦になった。
千秋楽のＮＨＫ中継で解説の北の富士さん（元横綱）が言った。「協会から〝余計なことを〟といわれそうだが（朝乃山は）いい加減に許してやったら。謹慎して人が変わった阿炎の例もある。このままでは大事な宝を失うことになる」。おきて破りの外出と虚偽報告。責任ある地位ゆえの重い処分にしても６場所は長すぎると小欄も思っていた。
刑罰なら国の慶事に「恩赦」の制度がある。コロナ禍の１年、無事６場所を開催できたことで観客上限５０％でも九州場所千秋楽に感謝の意を表す「満員御礼」が出た。協会にとってこれ以上の慶事はない。朝乃山の「恩赦」を考えるいいタイミングではないか。（今村忠）
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