BiSHのアユニ・Dのソロプロジェクト──という枕詞がどんどん不必要になっているほど、一つのスリーピースバンドとしての求心力を高めているPEDRO。という周囲の声を受けて、筆者は6月に開催された無観客配信ライブで初めて彼女たちのライブを観た。
事実、PEDROは本当にありったけの熱量を等しく分かち合いながら、楽曲の様相としては種々雑多で無軌道なガレージやオルタナを含むロックやパンクサウンドを、しかしこの時代にあっては貴重なまでに直線的な演奏と歌でその衝動を解放する魅力的なバンドだった。そんなバンドのギタリストを田渕ひさ子が担っていることも、なんとも痛快だ。
PEDROが4月にリリースした4曲入りのEP『衝動人間倶楽部』は4曲4通りの性格をもって、アユニの現在進行系のイズムが表出し始めていた作品だと言えるだろうし、果たしてリリースされた2ndフルアルバム『浪漫』はまさに「最初はバンドをやることが恐怖でしかなかった」アユニが、「一生音楽を続けたいと思うようになった」劇的な人生革命を体感してきた道のりの結晶だと捉えることができる。
そして、『衝動人間倶楽部』の4曲すべてで制作されたMV、そして8月12日から毎日配信されてきた『浪漫』各曲のスタジオライブ映像。そのディレクションを一括して担当しているのが、今や日本の音楽シーンを代表する映像作家の一人となった山田健人である。
BiSHのMVのみならず今ではライブ演出も手がけている山田は、PEDROとも結成当初から深く関わっている。アユニは『衝動人間倶楽部』『浪漫』の各曲をどのような思いを抱きながらアウトプットし、山田はそれらをどのように受け止め視覚化したのか。両者の対談からPEDROの現在地を感じてもらえたら幸いだ。
前は捻くれた発想でパワーワードばかり使うことを意識していた。でも、それでは伝わらないと思って。少しでも私の思っていることが伝わってほしいと思うようになったんです。(アユニ)
―恐縮ながら、6月の無観客配信ライブ『GO TO BED TOUR IN YOUR HOUSE』で初めてPEDROのステージパフォーマンスを観たんですけど。想像以上にバンドだなと思ったというのが率直な感想で。ギターの田渕(ひさ子)さんとドラムの毛利(匠太)さんもサポートという感じではなく、アユニさんと熱量を等しく分かち合って解放しているスリーピースバンドだなって。PEDRO結成当初から関わっているdutchくん(山田健人の通称)からは、ここまでのPEDROはどう映ってるんですか?
『GO TO BED TOUR』が全公演キャンセルになったことを受け、6月14日に開催された無観客ライブ配信。山田健人が映像演出を担当した山田健人:BiSHのMVを撮らせてもらったり、今ではライブの演出にも関わらせてもらったりしている流れでPEDROのお話もいただいたのが最初だったと思うんですけど。覚えているのが、PEDROが立ち上がるときに企画書のようなものが送られてきて、そこにギタリストの候補者も書いてあったんですね。そしたら一番上に田渕さんの名前があって。その時点で「おおっ!」と思いました。僕もNUMBER GIRLを聴いてきたから「激アツやんけ!」と思って(笑)。
アユニ・D:その時のギターの候補者は他にどなたがいたんですか?
山田:誰だったかなぁ。ちょっと思い出せないんだけど。とにかく僕は田渕さんがギタリスト候補にいた時点でテンションが上がって。ファンの人も含めて最初はみんなそうだったと思うけど、正直、PEDROがこんなに続くとはあまり思ってなかったんです。最初は「とりあえず一回やってみよう」という雰囲気があったと思います。
アユニ:うん。正直、私もそう感じてましたね。

左から:山田健人、アユニ・D
PEDRO(ぺどろ)
BiSHのメンバーであるアユニ・D(Vo,Ba)によるソロバンドプロジェクト。田渕ひさ子(Gt / NUMBER GIRL、toddle)、毛利匠太(Dr)がサポートを務める。アユニ・Dが全作詞を行う。2018年に『zoozoosea』でデビューし、2019年8月28日に1stフルアルバム『THUMB SUCKER』をリリース。2020年4月にリリースしたEP『衝動人間倶楽部』のツアーが全キャンセルになったことを受け、6月14日に無観客ライブ『GO TO BED TOUR IN YOUR HOUSE』を配信した。8月26日には2ndフルアルバム『浪漫』をリリース。
山田健人(やまだ けんと)
映像作家 / VJ。Suchmos、宇多田ヒカル、米津玄師などのMVをはじめとして数多くの映像作品を手がける。yahyelのメンバーでもあり、ライブではVJを務める。PEDRO『衝動人間倶楽部』の4曲すべてのMVを監督し、ライブの映像演出も担当。
山田:最初の1枚(『zoozoosea』)をゲリラリリースして、そこからレーベルを移籍して、プロジェクトが続いていって。去年の夏にリリースした1stアルバム(『THUMB SUCKER』)を聴いたときに、カッコいいなと思った。好きな曲も何曲かあって、特にアユニの書く歌詞がすごくいいと思うんですよね。これはでも……本人を前にしたら恥ずかしくて言えないな(笑)。
―せっかくの対談なので言ってください(笑)。
山田:たとえば自分がもし10代の女の子だったらより共感すると思うんですけど、今の僕がアユニの歌詞を解釈しようとしてもグッとくるところがあるんです。それは『衝動人間倶楽部』の時にも、もちろん今回の『浪漫』にもありましたね。たとえば“生活革命”という曲には哀愁を感じるというか、音楽ジャンルとしてのブルースではなく、感情を表す言葉としてのブルースを感じる部分が魅力的だなと思いました。
―dutchくんの言葉を聞いてアユニさん、どうですか?
アユニ:うれしいです。でも、私が書く歌詞はまだまだわかりにくい気もするんですよね。
―でも、別のインタビューを拝見したら「もっとわかりやすく伝わる歌詞を書くよう心がけるようになった」と言ってましたね。実際に過去曲と今作を比較してもストレートな筆致になっていると思います。
アユニ:そうですね。今はストレートな歌詞を書くようにすごく意識していて。そのほうが今の自分に合ってるなと思ったんです。
―それは自分がPEDROというバンドで発する表現に自覚的になったからですか?
アユニ:そうですね。前は捻くれた発想でパワーワードや造語ばかり使うことを意識していたし、そういう歌詞しか書けなかったんです。でも、それでは人に伝わらないと思って。共感してほしいという欲が強いわけではないんですけど、少しでも私の思っていることが伝わってほしいと思うようになりました。
―dutchくんが挙げてくれた“生活革命”も、それまでの曲を踏まえると異色ではありますよね。シンプルに捉えればラブソングの体を成しているんだけど、他にも想像できる物語性がある。
山田:そう、具体性もあるんだけど、想像できる行間がある。歌詞の1行1行からアユニがどういう表情で書いて歌っているか想像できるし、その行間にある悲しみとか憂いがいいなと思って。僕自身、奥行きのある表現が好きなので。
アユニ:ああ、うれしいです。
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August 26, 2020 at 04:31PM
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アユニ・D×山田健人 衝動を解放する場所としてのPEDROを語る - CINRA.NET(シンラドットネット)
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