2020年03月22日21時55分
◇TVさじきの声援、メールで実感
無観客で行われた大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)は22日、千秋楽を迎えた。日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)が協会あいさつで「全力士、全協会員を誇りに思います」と言葉を詰まらせた15日間。力士たちは未曽有の場所を、スマートフォンやタブレットに助けられて戦った。
無観客開催が決まったのは初日の1週間前。各力士は想像力をかき立てて心の準備をしたが、静まり返った館内は、想像を超える異空間だった。
初日を終えた鶴竜は「忘れられない1日」、初日から4連敗した錦木は「カメラのシャッター音しか聞こえない。すごい違和感」。口々にその戸惑いを語った。
テレビの前で多くのファンが見ていると思っても、ピンと来ない。「近くに(観客の)目があるのとテレビの向こうにあるのとは全然違う」と松鳳山。
だが、いつも以上にたくさん届く家族や友人・知人からのメールやLINEなどで、見てくれていることを感じた。12勝の好成績を挙げた隆の勝は「毎日連絡をくれる人がいる」、阿炎は「雰囲気に慣れはしなかったけど、テレビで応援してくれる人がいて、気持ちは全力で取れた」という。
照強は豪快に塩をまいても、湧いてくれる観客がいなかったが、「(館内が静かで)テレビから塩をまく音が聞こえると言ってくれる人がいるんで、やるべきことをしっかりやろうと」パフォーマンスを続けた。
感染防止のため夜間外出を禁じられたのも、力士たちの大きなストレスだった。年1度の大阪場所。ご当所力士もいる。本来なら、関西の後援者や知人との食事、馴染みの店など楽しみが多いが、今場所はお預け。負けた日の「験(ゲン)直し」にも出られない。
宿舎でゲームをしたり、映画や動画を見たりして過ごす力士が多かったようだ。大関昇進に挑戦していた朝乃山は「アクション映画。負けた時に何かリフレッシュしようと見始めた」。松鳳山は「早く寝られるんだから寝ればいいんだけど、映画や動画を見始めて結局(午前)2時、3時」と報道陣を笑わせた。
◇手放せなかったタブレット
家族からの励ましもメールやLINEがもっぱら。朝乃山は14日目に4敗となった後、両親から「悔いのないように」とメールをもらい、千秋楽に臨んだ。9勝した宝富士は「テレビ電話で癒やされる。子どもが可愛くて。早く場所が終わって会いたい」とメロメロ。いつもの地方場所以上に、そうしたやりとりが力になった。
昨今は、平時でも豪快に夜遊びする力士がすっかり減り、部屋でゲームなどをして過ごす力士も少なくない。このため極端に生活が変わったわけではなく、むしろ体調が良かった力士もいた。
これがひと昔、ふた昔前だったら、さしずめ部屋で大酒を飲みながらサイコロや花札か。携帯電話がなかった時代なら、部屋宿舎のピンク電話が盛んに鳴っただろう。関取衆の世話や電話の取り次ぎなどで、若い衆は大変だったはず。レンタルビデオ店へも走らされただろうが、今はその必要もない。
そんな中で力士らしい酒豪の伝統(?)を受け継ぐ錦木は、旧知の店にも通えず、「部屋で飲むしかないじゃないですか」と苦笑した。動画や漫画を楽しみながら飲み、グラスとタブレットが手放せなかったようだ。
とはいえ、一様に口にしたのは観客のありがたさ。徳勝龍は先場所、日ごとに大きくなる声援に後押しされて幕尻優勝を果たした。今場所は初めての幕内上位で4勝11敗。「条件はみんな一緒」と無観客を苦戦の理由にはせず、鶴竜から金星も挙げたが、「改めて声援って、すごいんだなと。お客さんあっての大相撲」としみじみ話した。
夏場所(両国国技館)は5月10日初日。すぐにやって来る。予断は許さない。「調整の仕方を覚えたら、今後こういう場所があっても大丈夫なのでは」(豊山)という経験もできたが、誰もが正常化を望んでいる。夏場所を新大関で迎えることが確実な朝乃山は「できたらお客さんに入ってもらって、声援を受けたい」と、祈るように話した。(時事ドットコム編集部) ![]()
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March 22, 2020 at 08:00PM
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