
7月11日に英ヴァージン・グループの総帥であるリチャード・ブランソンが創設した、ヴァージン・ギャラクティック(VG)が高度86キロ・メートルに到達し、アメリカの基準では「宇宙」に到達した(日本の基準は100キロ・メートル以上が宇宙)。また、7月20日には米アマゾンの創設者であるジェフ・ベゾスが搭乗したブルーオリジン(BO)の機体が高度107キロ・メートルの宇宙に到達した。
両社に加え、電気自動車のテスラを創設したイーロン・マスクも宇宙開発に乗り出しており、今や、大富豪が宇宙開発を主導している感がある。国家の威信をかけて米航空宇宙局(NASA)や宇宙航空研究開発機構(JAXA=ジャクサ)が行う宇宙開発が時代遅れになったかのような印象も受ける。しかし、中国はアメリカに追いつくべく、国家を挙げて宇宙開発に乗り出しており、日本も「はやぶさ2」が小惑星からサンプルを持ち帰り、NASAも火星探査機を送るなど、国家による宇宙開発が衰えたわけではない。
富豪たちによる宇宙開発は彼らが宇宙好きという以上に、宇宙旅行がビジネスになるという期待もある。実際、BOの座席の一つはオークションにかけられ、30億円を超える値が付いた。それだけのお金を出してでも宇宙に行きたい人がいるのだから、再使用可能な機体を何度も打ち上げれば開発の費用も回収できると踏んでいるのだろう。
しかし、VGやBOが目指しているのは30億円払える超富豪の顧客ではなく、2000万円台の価格に設定し、より多くの乗客に宇宙に行く体験を提供するということである。2000万円台でも十分高いが、それでも厳しい試験をくぐり抜けて、NASAやJAXAの宇宙飛行士になるしか宇宙に行く方法がなかった時代よりは、多くの人に宇宙を体験する機会が与えられたと言える。
こうしたことが可能になったのは、VGもBOも「弾道飛行」を行うからである。人工衛星のようにずっと宇宙に
多くの人が「宇宙に行ける」という思いを実現できるのは大きな変化である。宇宙が一握りのエリートのものではなく、頑張ってお金を稼げば行けるかもしれない場所になる。そう考えると商業宇宙飛行は、人類にとっての宇宙の意味が変わる、大きなきっかけになるかもしれない。(東大教授・国際政治学)
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