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Thursday, April 1, 2021

(103) もし、この場所へ行かなければ 永瀬正敏が撮ったカタール - 朝日新聞デジタル

cicilopo.blogspot.com

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回はカタールの港で撮った一枚。最初気乗りがしなかった場所で、思いもよらぬカットが撮れたというのです。

(103) もし、この場所へ行かなければ 永瀬正敏が撮ったカタール

©Masatoshi Nagase

カタールの港を見下ろすカップル。
ここは伝統的な木造帆船“ダウ船”が集まる港。

ダウ船は板を固定するためにくぎなどを使わず、
タールやひもなどを用いて造る帆船だそうだ。

カタールを代表する建築でもある美術館「The Museum of Islamic Art」にお邪魔した際、
地元のコーディネーターさんにダウ船のことをうかがい、すぐ目の前の港にあるというので、
「まぁ見にいってみましょうか」ぐらいの軽い気持ちで向かった。

美術館の敷地のすぐ横に港はあった。
というか、美術館が港の中に建てられた感じだ。
港にはたくさんのダウ船が停泊し、行き交っていた。
カタールや近隣諸国の皆さんにとっても、この光景は珍しいのだろうか?
大勢の皆さんがその様子を見たり、カメラやスマホで撮影したりしていた。

その中にこのカップルがいた。
僕はダウ船の撮影をすぐに切り上げ、2人にレンズを向けた。

もやがかかった港を高台から見下ろしている2人の姿。
風になびく紅と白の衣装のコントラストが瞬時に目に入ってきて、
「すぐ撮りたい」と思ったのだ。

僕は最初、港へ行くことにあまり乗り気ではなかった。
コーディネーターさんが丁寧に説明してくれたので、
「まぁ2、3枚ダウ船を撮ってほかの場所へ移動しようか」みたいな感じで向かったのだ。

コーディネーターさんがここへ導いてくれなかったらこの写真は撮影できなかった。
あのまま「いや、別の場所に移動しましょう」と美術館を去っていたら、
この2人には出会えなかった。彼のおかげだ。

撮り終えた後、ひとしきり彼に感謝した。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作にオダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」 、大森立嗣監督「星の子」など。 写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2021年1月16日から3月21日まで、愛知県の「高浜市やきものの里かわら美術館」で写真展が開催される。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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