芸人・宮迫博之のYouTubeチャンネル「宮迫ですッ!」が開設されるや、その隣に座り、掛け合いする見知らぬ男性に「売名」などの批判が殺到した。現在、宮迫のYouTubeチャンネルでカメラマン兼アシスタントを務める、俳優・つつみひろきさんだ。しかし、地道に動画を投稿して様々なYouTuberとコラボを重ねるうちに、当初は批判も多かったYouTubeチャンネルへの風向きが徐々に変化。つつみさんに対するコメントにも好意的なものが増えてきている。YouTuberとして活動する宮迫を支えてきた彼が、今何を思うのか。これまでの経緯を含めてじっくり話を聞いた。
【動画】スタッフ・つつみの借金を肩代わり、宮迫「全部俺に回せ。俺に返せ」
■「何でもできる“器用さ”に甘えてしまった」YouTube開設当初の後悔
――つつみさんと宮迫博之さんとのご縁は、舞台からの共演なのですよね。
【つつみひろき(以下 つつみ)】一昨年秋に舞台で初めて共演し、その年末に舞台のメンバー何人かで一緒に韓国旅行に行ったんです。そこで僕はすごく緊張して、気を遣ってしゃべんなきゃいけないと思い、宮迫さんにタクシーの車内でたくさん質問したんですが、それが非常にウザかったらしく(笑)。そこから昨年の騒動があり、YouTubeを始めるときに、カメラマンをやらないかと声をかけていただきました。「YouTubeは親近感を持ってもらうことが大事で、プロの芸人より、素人感があったほうが良い」「YouTubeではカメラマンと掛け合いをすることが多い」ということから、「そういえば、あいつ、すごい質問してきよんな」と思い出してくれたようです(笑)。あまりの大役に、最初は「ちょっと考えさせてください」とも申し上げたんですが、改めて冷静に考えてみて、「宮迫さんのそばでお仕事できるというのは、役者業をいったん休むにしても、演者としてこんなにプラスなことはない」と思ったんですよ。
――つつみさんご自身、最近では江頭2:50さんとのコラボ動画でバンジージャンプにチャレンジするなど、カメラマン兼アシスタントの枠を超えて活躍されていますね。
【つつみ】江頭2:50さんのYouTubeチャンネル「エガちゃんねる」にアップされた動画には、8000いいねくらいついていて、今もまだコメントが増えています。ビックリしました。「ポンコツだからとべないと思ったけど、感謝の言葉を言いながらとんだのは男気を見た」「好感度爆上がりした」といったコメントがあったのも、めちゃくちゃ嬉しかったですね。僕はもともと演者ではあるので、パフォーマンスする機会を与えていただいたこと、まして江頭さんは僕ら世代のスーパースターなので、一緒に絡めてオイシイ役をいただけるのは本当に嬉しかったです。たった一つの動画、たった一つのアクションで、ここまで流れが変わったり評価をいただいたりするとは、その影響力の大きさに驚きました。
――YouTuberでは、スタッフさんとの絡みが注目され、スタッフさん自身の人気が上がることもありますね。ご自身に注がれる期待や注目度、役割をどう感じていますか。
【つつみ】僕は僕自身が宮迫さんを面白くするためのツールだと思っています。でも、今もまだ「面白くない」とか、「このスタッフ出しゃばりすぎじゃない?」とかシビアなご意見もいただくんですが、僕なりにその役割をどうしたらまっとうできるかをいつも考えています。宮迫さんはテレビ番組ではドSキャラとして見られることも多かったと思うんですが、YouTubeではもっと親しみやすさを感じてもらいたい。僕らでイジッたり、撮影後もダラダラトークしたり、ワチャワチャしたファミリー感がある中で、宮迫さんの素の部分をいかに引き出せるかが求められていることだと思っています。
――宮迫さんにはドSイメージに加えて、何事も器用に出来て立ち回りがうまいイメージを持っている人も多いと思います。そこがYouTube開設当初にはやや裏目に出たところもあったのでは。
【つつみ】それはあると思います。最初は宮迫さんも僕たちも、「他のYouTuberがやっているようなチャレンジ企画を芸人がやればもっと面白くなるよね」という感覚でした。それで、実際やってみたら、かなりのクオリティを保った形で“できてしまう”んですよ。僕たちがそこに甘えてしまった。室内で「〇〇をやってみた」系の企画を最初に撮りだめしたんですが、いざ公開してみると、それが意外とハマらなくて。「ヤバいねえ。きっと視聴者が求めているのは、こういうことじゃないんだね」と(苦笑)。そこからYouTuberがやっていることを宮迫博之がやったら面白いという考えはやめようと話し合い、改めて「宮迫さんの強みってなんだ?」というところから、歌やコント、食レポなど、どんどん細分化してコンテンツにしていこうという流れになったんです。
■「宮迫ってこんなに面白かったんだ」YouTube視聴世代に認めてもらえることが嬉しい
――テレビと違うYouTubeならではの見せ方は、どのように意識されましたか。
【つつみ】素の部分をどんどん見せていこうと。コンテンツとしては、例えば実家のお父さんを東京にお呼びしたり、実家にお伺いしてお母さんに登場してもらったり、あとは嫁迫さん(宮迫の妻)に出演してもらったり。テレビでは鬼嫁イメージでしたが、動画で登場していただいたら、鬼嫁というよりも、意外とのほほんとした夫婦の画がとれて、印象がガラッと変わりましたね。「嫁迫さん可愛い」「いろいろあったのに、こんなこと言ってくれる嫁迫さん最高」など、コメントもすごく多くて。いま、嫁迫さんのほうが人気あるんじゃないですかね?(笑)
――嫁迫さんは、大評判でしたよね(笑)。でも、軌道にのってくると、逆にチャンネル開設当初、もっとうまくやれたんじゃないかと思う部分もありますか。
【つつみ】反省点はまず、僕自身の立ち位置です。当初は動画のオープニングから、同じ衣装を着て宮迫さんの隣に座っていたんですが、それが大不評で。「誰やねん!」「面白くない!」「売名デブ!」と散々言われました。ダイレクトにもSNSでアンチのメッセージがきますし、正直キツかった。ただ、SNSのアンチコメントは気にするなというのが定説で、単なる誹謗中傷だったら無視すれば良いと思うんですけど、批判のなかには、宮迫さんのことをちゃんと考えてくれているファンの方からのご意見も多かったんです。それを無碍にシャットダウンするのは違うと思うから、誹謗中傷と意見は切り分けて、参考にさせていただきました。だから、今は僕、横にいないんです。
――ただ、もともと横にいたのは、つつみさんがいたかったからではないんですよね?(笑)
【つつみ】むしろ嫌でしたよ(笑)。宮迫さんのトークに返答したりツッコめたりする人がほしいということで、当時は横に誰かいたほうがいいという判断でした。でも、雨上がり決死隊として活動できていない宮迫さんの隣に、同じ衣装を着てつまんないヤツが一緒にやっているとなれば、批判を食らうのも当然ですよね。ただ、宮迫さんが僕を擁護するコメント動画を出してくれてからは、風向きが変わって。もちろんアンチコメントがなくなったわけではないけど、「頑張って。応援してるよ」というコメントが今は励みになっています。
――宮迫さんを一番近くで見ていて、芸人としての凄さを感じるのはどんな点ですか。
【つつみ】正直に言うと、僕自身、テレビで観ていた宮迫博之はそこまでスゴイと思っていなかったんです。でも、一緒にいるようになって思うのは、マジでなんでもできちゃう人だということ。歌、コント、MCもできるし、トークでは受けも攻めもできる、運動もできる、食レポも上手いし、料理も上手いんですよ。能力バロメーターを作ったとして、ここまで全部の項目が高い芸能人の方を僕は知らないです。
――テレビではやれなかったことを、YouTubeだからやれるという実感もあるんでしょうか。
【つつみ】そうですね。ここ数年は宮迫さんには決まったレギュラー仕事があって、基本的にMC側で、プレイヤーとしての刺激は少なかったと思うんですよ。それがYouTubeでは、コントやったり、若手芸人さんがやるような体を張る企画をやったりするので、「楽しい!」と言っています。YouTubeを通して、これまで以上にスキルが上がっているんじゃないかな。コメントで嬉しいのは、「宮迫ってこんなに面白かったんだ」というもの。若い人の間では『アメトーーク!』をまわす人のイメージが強いみたいで、コントとか歌を披露して「こんな才能あるんだ」という声が多いんですよ。今の目標は、YouTuberのチャンネル登録者数が今129万人くらいなので(1月12日現在)、150万人を突破すること。それとは別に、宮迫さんにとってはやっぱり『アメーーク!』が「実家」であるので、僕らチーム全員の目標として、やっぱりテレビに戻るという目標も掲げています。YouTubeはやりたいことをやる場として残しつつも、実家には戻ってほしい。宮迫さんが輝くのは「テレビに戻る=蛍原(徹)さんの横に戻る」ことなんです。
■「このポジションにいたい芸人さんがどれだけいるか。僕が選ばれている以上はできることをするしかない」
――つつみさんは宮迫さんのYouTubeの企画で、借金を抱えていることも明らかに。宮迫さんが借金を肩代わりすると言ってくれた動画で「全部出せ。全部俺に回せ。俺に返せ」という宮迫さんの漢気ある言葉も印象的でした。つつみさんにとって宮迫さんはどんな存在ですか。
【つつみ】僕にとっては、父親ですね。技術面でも精神的支えの面でも、大黒柱として絶対的な安心感がある、この人についていけば大丈夫だと本気で思わせてくれる存在です。僕がめちゃくちゃ批判されていたときも、「お前は大丈夫や」と言ってくれたんですよ。「大丈夫」という言葉自体は普通の言葉なのに、宮迫さんが言ってくれると、大丈夫だと本気で思えるんです。
――宮迫さんがスタッフさんだけに見せる弱さもありますか。
【つつみ】ありますね。宮迫さん、実は人見知り。舞台でご一緒したときは、それを感じさせないように気を使ってくださってたんだなって。すごく気にしぃで、メチャクチャ傷つきやすいところもあるんですよ。移動中はずっとコメントを見ていますし、辛辣な意見には凹んでいますし、撮影終わるといつも「おもろかったか?」と僕らに聞きますし。とても…可愛い方なんです(笑)。それと、最近は服が大好きで、たくさん買ってくるんですけど、毎回「どや?」って聞いてきます(笑)。
――今後、YouTubeチャンネルをどんなものにしていきたいですか。また、どんな関わり方をしていきたいですか。
【つつみ】宮迫さんがやりたいと思うことをどんどんやっていきたいです。宮迫博之という芸人の、パフォーマーとしての面だけでなく、人間としての弱みやダメな部分もまるごと出せるチャンネルでありたい。また、僕自身についていうと、このポジションにいたい芸人さんがどれだけいるかって話なんですよ。そのプレッシャーはずっとあって、責任もある。僕よりも面白くできる人なんてごまんといる中で、僕が選ばれている以上、僕ができることをするしかない。芸人さんではなく、1年間一緒にいたスタッフとして、培ってきた関係性があるからできるやりとりもあると感じています。そこを大事に、テレビでは見られなかった宮迫さんを引き出しながらサポートするスタッフでいたいなと思いますね。
――つつみさんだからやりやすかったと言われたことはありますか。
【つつみ】…思い返してみましたけど、ないかなあ(笑)。ただ、飲んでいるときに「ええやつやねん」って言ってくれたことはあります。「例えばいま、道端で困っているおばあちゃんとかいたら、お前は助けるやつやねん」と。嬉しかったですね…そういうところで選んでくれたのかとは感じています。実は開設当初は、「もっと強くツッコんだほうが良い、上からいかないと面白くならない」とアドバイスいただくことも多かったんです。でも今考えると、やらなくて良かったなと思います。僕はスキル面で選ばれているわけではないし、そこで背伸びしてやると変なテンポになるし。お芝居でもよく「自分の中にあるもの以外は出ない」と言われていて、結局出そうと思っても自分の中にあるものでしか勝負できないと。自分らしさは大事にしたいと思います。(取材・文/田幸和歌子)
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